2015年11月23日【産経ニュース】《東日本大震災》 「企業は働く者の命守る義務がある」 津波で12人犠牲の七十七銀行女川支店津波訴訟 遺族ら専修大で講義

専修大で開かれた津波を題材にした法学の公開講義。田村さん夫婦(左)は東日本大震災の津波で長男の健太さん(当時25歳)を亡くした。健太さんは専修大法学部の卒業生だった=23日、東京都千代田区(原田成樹撮影)

 東日本大震災の津波で12人の死者・行方不明者を出した七十七銀行女川支店(宮城県女川町)の裁判を題材にした法学の公開講義が23日、東京・神田神保町の専修大学で開催された。

同支店では平成23年3月11日の地震直後、支店長の指示で従業員13人が2階建ての支店屋上(高さ約10メートル)に避難したが、4人が津波にのまれて死亡し、支店長を含む8人が行方不明となった。歩いて約3分の高台に避難していれば助かっていたなどとして、従業員3人の遺族が同行に損害賠償を求めた訴訟は、1審・仙台地裁、2審・仙台高裁とも銀行側の責任を認めず、遺族らは今年5月、最高裁に上告している。

講義では、犠牲者の一人で同大OBの田村健太さん=当時(25)=の両親や、遺族弁護団の弁護士3人が順に訴訟の経緯や震災時の状況などを紹介。父親の孝行さん(55)は「人命を預かる企業は働く者の命を守る義務がある。企業の防災のあり方、安全ある社会を皆さんと一緒に考えていきたい」、母親の弘美さん(53)も「(なぜ高台に避難しなかったのか)究明の手段を裁判に託すしかなかった」などと学生らに訴え、約350人で埋まった教室でははなをすする音も聞こえた。

質疑応答もあり、北見淑之弁護士は、裁判は企業が従業員の命を守る「安全配慮義務」について争われているとした上で、「当時の支店長らの個人的責任を追及しているのではなく、震災前の平成21年に、近くの高台だけでなく、屋上も避難場所に付け加えた銀行の責任が重いと思っている」など、論点についても詳しく掘り下げた。

 

聴講した法学部3年の女子学生(22)は「状況から銀行の責任を問うのは難しいと思うが、個人的には頑張ってほしい」と田村夫妻にエール。司会の飯(いい)考行・法学部准教授は「東京ではなかなか聞けない声に耳を傾ける機会を作りたかった。安全配慮義務なども実例をもって学べたのでは」と話していた。

同支店は21年、同行の災害対応マニュアルに同店屋上を避難場所に追加した。遺族側は「追加指定したことが支店長の誤った判断を招いた」と主張し、銀行側は「屋上を超す津波が到達することは予見できず、安全配慮義務違反はなかった」と反論していた。

引用: https://www.sankei.com/affairs/news/151123/afr1511230029-n1.html (産経ニュース)

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