2021年07月01日世話人メッセージ 愛媛大学 法文学部教授・博士(法学) 小佐井 良太

 

私は、愛媛大学法文学部で法社会学という学問分野の研究・教育に携わり、法や裁判の役割を社会との関係で考えています。田村さんご夫妻と女川町の現地で初めてお会いしてお話をうかがったのは、2014年9月のことでした。この時以来、田村さんご夫妻には折に触れてお話をうかがってきました。2017年からは毎年、ゼミの学生たちと一緒に女川町の現地を訪れ、お話をうかがっています。2020年はコロナ禍のためオンライン形式でしたが、「健太いのちの教室」のご紹介も含め、ご夫妻の思いを学生たちと一緒に受け取りました。

七十七銀行女川支店事件の経緯で、私が最も疑問に思うのは、七十七銀行側の事後対応の問題です。なぜ、銀行は、健太さんたち女川支店勤務の行員仲間の死と真摯に向き合い、悼むことができなかったのか。なぜ、田村さんたちご遺族の悲しみに寄り添うことができなかったのか。もし、銀行が当時の避難体制を検証して田村さんたちご遺族に伝え、痛惜の念を持ちつつ企業として従業員の命を守るための「企業防災のあり方」を田村さんたちご遺族とともに考えようとする姿勢であったなら、田村さんたちご遺族が裁判の場での戦いを選択されることはなかったのかもしれません。

こうした事後対応の問題と法や裁判、法的責任とのかかわりを考えることは、私が田村さんご夫妻から教えていただいた課題です。これからも多くの人たちが、それぞれの立場で「健太いのちの教室」の活動から学びを得て、健太さんの生きたかった思い、田村さんご夫妻の思いを受け止めて、それぞれの形で社会に活かす機会となることを切に願っています。

 

愛媛大学 法文学部教授・博士(法学)

小佐井 良太

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