2025年01月17日世話人メッセージ 紡ぎの会 代表東武伊勢崎線竹の塚踏切事故遺族 加山 圭子

私の母は、2005315日夕方、開かずの踏切で突然この世を去りました。踏切の遮断機を上げ下げする踏切保安係が、準急電車が来るのを忘れて遮断機をあげてしまい、通行人が多数踏切内に入ってしまったために、4人が死傷するという事故に巻き込まれてしまったのでした。電車は時速90キロメートルという速さ、圧倒的な重量。新聞記事によると、母は自転車から下りて自転車を押しながら踏切に入り、電車に撥ねられて20メートルほど飛ばされたとありました。即死でした。

 悲惨な事故を起こした保安係の責任を問う裁判や、鉄道会社が行った事故調査の事故報告書では、事故がなぜ起きたのか、事故にはどんな背景があるのか、十分明らかにすることはできませんでした。

 私たちは、2005年当時、航空鉄道事故調査委員会に、竹ノ塚踏切事故の事故調査をすることを要請しましたが、死傷者5名以上という事故調査の要件に当てはまらないため事故調査されませんでした。竹ノ塚踏切事故のような悲惨な踏切事故を無くすには、事故の原因を明らかにする事故調査が必要であると訴えましたが、調査されませんでした。

 2008年運輸安全委員会が発足する際に、竹ノ塚踏切事故のような鉄道係員の操作ミスや車両や鉄道設備の故障などが原因で起きた死亡事故を新たに事故調査の対象にすることが決まりました。

 また、この事故の後、国土交通省は全国の踏切のうち緊急に対策が必要な踏切を抽出する作業を行い、1960箇所以上の踏切のリストを作成して様々な対策を講じています。

 私は母の死をとおして、悲惨な踏切事故が全国に多発していることを知り、悲惨な踏切事故を無くしたいと、踏切事故の遺族と連絡を取り合い、2010年遺族の会を結成しました。遺族らと事故の現場をたずね、事故を無くすにはどうしたらよいのか検討しました。運輸安全委員会には、踏切での死亡事故はすべて事故調査をしてほしいと要請してきました。その結果2014年から、遮断機のない踏切でおきた死亡事故について事故調査をすることが決まり、事故原因の究明がなされるようになりました。

 国土交通省は「鉄軌道輸送の安全に関わる情報」(鉄道局)という統計を毎年公表しています。それによると、踏切事故の件数は長期的には減少傾向にあるものの、コロナ禍を経て、再び増加傾向にあります。2023年度は257件踏切事故がおきており、これは対前年度比62件増です。また、死傷者数は164人で対前年度比27人増となっています。国土交通省は、なぜ踏切事故が再び急激に増えて居るのか、その原因を調査し対策を講じるべきだと思います。

 一人一人を大切にし、安心して安全に暮らせる社会にするためには事故を繰り返さないという強い意思が必要であり、鉄道はじめ関係者の皆様には、事故原因を究明し再発防止のための対策を講じてほしいと考えています。

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