2020年10月07日世話人メッセージ 大阪市立大学大学院 名誉教授 高橋 眞博士(法学)

田村さんたちの裁判では、平時の準備段階で、避難場所として高台があったにもかかわらず、なぜ屋上を追加したのかを問い続けました。高裁では判決の結果には反映しなかったものの、「津波の高さの予想にかかわらず安全な場所に避難すべきであるとする控訴人らの主張は尊重されるべきである」という言葉を引き出しました。その後、事故を確実に防ぐために、事前の準備こそが決定的に大切だということは、大川小学校事件の判決で明らかにされましたが、これは七十七銀行事件での問いを引き継いだものだということができます。

そして学校現場だけでなく、職場においても、防災のための事前準備を確かなものにするためには、想定するべき災害及びその職場の置かれた客観的条件の十分な研究と、対応のための訓練が必要です。そのためには、企業のガバナンスやコンプライアンスという組織論だけでなく、日頃から誰もが遠慮することなく不安や疑問、さらに情報を持ち寄って、安全を現実に確保するための知恵を出し合うことのできる条件を作ってゆくことが不可欠です。

顔の見える一人一人が、それぞれの歴史の中で生き、過去・現在・未来の親族や友人、仲間にとってもかけがえのない存在であることであることを直視し、自分自身のためにも、また仲間のためにも、確実に命を守る行動をとることができなければなりません。そのために、地震や津波が発生してからできることは限られている、十分に時間のあるあいだに何をしなければならないか。そして、安全のための事前準備を阻むものを、どのように克服してゆくか。七十七銀行事件の経緯は、このことを考え続けるために常に立ち戻るべき場として、次の世代に伝えてゆかなければならないと考えます。

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